ヴェルク - IT起業の記録

受託開発と自社サービスの両立への取り組み

B2B SaaSの個別相談会を100回やったので振り返り

1年半ほど前に始めたboardの個別相談会、4月に実施回数が100回を超えていたので、個別相談会を開始した経緯や効果などを振り返ってみたいと思います。

 

個別相談会とは

説明会のような大人数が集まる形式ではなく、1社ごとに打ち合わせ形式で、デモ・質問・相談などに対応しています。

本来はこちらから伺いたいところなのですが、うちの会社では営業がいないのと、低価格なサービスのため、訪問してしまうとコスト的に厳しいため、弊社に来社頂くか、Googleハングアウトを使ったオンラインで実施しています。

 

個別相談会は、週2枠用意して、予約制で実施しています。

予め枠を用意しておくことで、こちらは予定をブロックしておくことができるので、都度日程調整ではなく枠を用意して予約制という形を取りました。

始めた当初は週2枠埋まることは珍しく月4〜5件くらいでしたが、ここ半年ほどは週2枠では足りず、週4〜5件入っていることが多いです。

 

個別相談会を始めたの経緯

個別相談会を始めたのは、サービス開始してから1年ほど経った2015年9月でした。

受託の会社なのでサービスのことは右も左も分からず、最初の1年はサポートや継続開発を軌道に乗せることで手一杯でしたが、この頃になると、ある程度慣れてきて、ようやく、サービス開始当初から課題として感じていた、「スムーズに導入してもらうこと」に対する対策としてスタートしました。

 

個別相談会の基本的な構成

個別相談会は以下のいずれかの内容で行うことが多いです。
・基本的なデモを実施して、随時ご質問頂く
・最初から質疑ベースで進める

事前にある程度boardを使い込んだ上で個別相談会にいらっしゃる方は質疑ベースになることが多いですが、割合としては8割くらいがデモベースです。

デモの内容は、質問による中断がない状態で20分くらいの内容で、
・基本的な構成・考え方を理解してもらう
・どういった機能があるのか、といったことを知ってもらう
といった内容が中心で、個別相談会から帰って自分でやってみてもらう際に、迷わないで使えるようにすることを目標にしています。

 

デモの内容は、毎回改善を繰り返しています。

聞いているだけだと飽きてしまうので、なるべく長くなりすぎず、でもしっかり説明するというバランスを試行錯誤しています。

ここ1年ほどは、デモは僕ではなく別のメンバーがやっているので、僕が気になった点をその場でメモして、終わった後に「ここの説明がわかりにくそう」「ここの説明が冗長だった」などをフィードバックして改善するようにしていて、かなり完成度が上がっています。

実際は、デモの途中で質問があったり、デモの後に自社の事業・業務内容を伺ってどういった活用方法が良いかといった話をすることが多いので、1時間〜1時間半ほどになることが多いです。

 

また、たまにboardとは関係なく、バックオフィス業務全般の効率化の相談や、社内システム・セキュリティについてなどの相談があることもあります。

boardの個別相談会は、今のところ必ず僕が出席していて、システム・経営・経理・会計・業務効率化などを、board以外の話もひと通り対応することができます。

あとは、稀に、「どういう会社か見ておきたかった」「ブログに書いてあったDIYオフィスをみたかった」「田向さんに会ってみたかった」というのもあります。

 

無理に売り込まないスタンス

boardの個別相談会なので、当然boardの説明をするのですが、僕自身、エンジニアであって営業ではないためか、「なんとしても売ろう」という意識が薄く、「売り込む」というスタンスではなく、「正しく伝える」「課題を解決する」といったスタンスで臨んでいます。

そのため、ニーズがboardと合わない場合、「○○(他のサービス)の方が合っていると思いますよ」という感じで、正直に伝えるようにしています。

 

個別相談会のメリット

個別相談会のメリットは以下のような点があると考えています。

間違った使い方を防げる

間違った使い方をして、「このシステム使いにくい」「自社にとってメリットない」と判断されてしまうのは、お互い不幸です。

個別相談会のデモでは、単なる使い方だけではなく、
・どういう意図で作られているのか
・どういうシーンを想定しているのか
なども説明するようにしています。

正しい使い方で合わない場合は仕方ないですが、「知らなかった」「勘違いしてた」で満足度が下がることを回避できます。

有料登録して頂ける割合が高い

デモの中で概要を伝えることができるので、その後スムーズに使えることが多く、結果として個別相談会に来た方がそのまま有料登録して頂ける割合が非常に高いです。

有料転換(お試し登録から有料登録への転換)率は、全体では14%前後ですが、個別相談会参加者に限定すると65%前後です。

個別相談会に来る時点である程度真剣に考えているということもありますが、「概要をつかむ」という最初のハードルを個別相談会でクリアできることも非常に大きいのかなと思っています。

また、boardの概要や基本的な設計思想を理解した上で使うと、より有効に活用できるので、おそらく継続率にもプラスになるんじゃないかなと思っています。

問い合わせだけではわからないことを把握できる

業務課題や困っていること、システム導入におけるポイントなどを直接聞いたりディスカッションしたりすることができます。
話した結果、実はあまり重要ではなかったり、ちょっとした工夫で改善できることも多く、要望や課題が、必ずしも額面通りとは限らないのため非常に重要だと思います。

今後の開発のヒントになる

元々、コンサルっぽい仕事をしていたり、受託でもわりとお客さんの方にがっつり足を踏み込むスタンスでやることが多いので、こういった話からニーズや課題を拾って解決策を考えていくのが好きで、それを今後のロードマップに反映していくといったことをやっています。

お互いを少しは知ることができる

僕個人としては、ずっと受託をやってきた人間なので、やはり顔を合わせずにずっと仕事をするというのは、なんか違和感があります。
低価格なサービスなので、全員に会っていたらそれだけで赤字になってしまうので無理ですが、できるだけ面と向かう機会を作りたい、1時間しっかり話す機会を作りたいという思いはあります。

それによって、どういう人か、どういう会社かを把握できるので、チャットサポート時の説明の仕方を調整したりしています。

また、表現が非常に難しいのですが、問い合わせが雑な方は少なからずいるのですが、個別相談会参加後は、丁寧になったり、無茶なことを言ってこなくなるといったことがよくあるので、お互い少しでも知っているということは大事だなと感じています。


個別相談会の課題

体制

個別相談会の申し込みの際に簡単なアンケートをお願いして、事前にある程度はどういう業態なのかを把握できるようにしていますが、それでも蓋を開けてみないと、どういう内容になるかわからないことが多いです。

今のところ必ず僕が参加しているので問題ないですが、単にデモにとどまらず様々な話になることが多く、結果的に扱うテーマが広くなります。今のクオリティを維持しようとすると、簡単に代わりができないので、開催数をなかなか増やすことができません。

オンラインの場合の快適さ

個別相談会は、弊社にご来社頂くか、Googleハングアウトを使ってオンラインで実施していますが、オンラインは、相手側の環境によって快適さがかなり左右されてしまいます。

度々切れてしまったり、音が割れて聞き取れなかったり、そういったトラブルはそこそこあり、もう少しどうにかならないかなあと考えています。

 

まとめ

boardは、マーケティングコスト(広告費などだけではなく社内のリソースとしても)をほぼかけていないのですが、個別相談会にはしっかり時間を割くようにしています。

有料への転換率を高める施策というのは色々あると思いますが、そういった色々な手は打たず、基本的に、個別相談会への参加を勧め、直接顔を合わせて話をするということを大事にしています。

小さい無名の受託会社がサービスを伸ばすにあたって、他と同じことをやっていてもダメで、自分たちの強み(受託の経験)を活かすことを考えた時に、個別相談会で対面して、課題を聞きながら説明していく、というのはぴったりでした。

受託で業務系のシステムをずっとやってきたので、それで増えた引き出しが役に立ってるなあと思います。