2022年4月11日にboardの有料登録社数が4000社を突破したので振り返りです。
boardの正式リリースは2014年8月20日なので、約7年半ほどで、推移はこんな感じでした。
1000社刻みで定点観測的に書いているので、過去の記事も貼っておきます。
受託の会社が資金調達せずに自社サービスを立ち上げて、有料導入1000社に行くまでの経営・受託とのバランス(BPStudy発表時の補足)
受託の会社が資金調達せずに自社サービスを立ち上げて、有料導入2000社に行くまでの振り返り
受託の会社が資金調達せずに自社サービスを立ち上げて、有料導入3000社に行くまでの振り返り
boardとは
見積書・請求書の作成から業務管理・経営管理などを行うことができるサービスで、主に数人〜数十人規模の小規模な会社をメインターゲットとしています。
8年目にして初めてサービス紹介動画を作ったので貼っておきます。
基本的なスタンス
会社の規模をどんどん大きくしていくことはせず、「10人の会社で1万社が使うサービスを」という方針で会社およびサービスを運営しています。今11人いますがw
「10人」という数字にこだわっているわけではなく、「小規模な会社を維持する」「事業の成長を人数で解決しようとしない」ための目安みたいなものです。
現在のboard関連へのアサインは、自分を含めエンジニア4名、サポート4名です。
弊社の働き方は、勤務時間を1時間短くしたり、基本的にほぼ残業もないなど、何かに向けてアクセルを踏むことはなく、無理のない持続可能なペースでやっています。
また、これまで同様、営業も広告もやっておらず、口コミと検索からの流入という受け身のスタンスで運営しています。
2000社のときに以下のように書いていて、
1000社から2000社は、約1年半だったのですが、この間はほとんど外にも出ず、ほぼ開発とサポートに注力していました。そして、boardとしての進め方がある程度固まったというか、自分の中で迷いがなくなった期間でした。
3000社のときに
2000から3000社のこの1年半もほぼ同じスタンスというか、より引き籠もって開発・サポートに注力するスタンスが強固になった感じです。
と書いていました。
3000から4000社の間は、コロナ禍とほぼ重なっていることもあり、よりこの傾向が強くなっていました。
この1年半(3000社→4000社)の大きなトピック
基本的にはほぼ週1で何かしらのリリースするペースを続けているので、機能追加や改善は日々行っていますが、いくつか大きなトピックがありました。
サポート(問い合わせ窓口)の仕組みの自社開発
以前はintercomというサービスを使っていたのですが、これを自社開発のものに切り替えました。
以下がその時のブログです。
約1年ほど運用していますが、これは本当に正解だったなと。
自社開発した狙いについて、詳しくは上記の記事を見て頂ければと思いますが、サポート業務の効率化やミスの低減などに関して、システム的に支援できることを組み込んで行っています。
サポート業務は、限られた情報から相手の状況・目的を適切に把握していく必要があり、本当に難易度が高いと思っています。
基本的にはサポートする「人」のレベルがサポート品質に直結するので、とにかく「人」のレベルを上げていくことがより良いサポートにつながると思っていて、そのための取り組みはずっと継続しています。
その上で、システム的に支援できることをしていくことで、「回答時に気にすることを減らす」ことができ、より本来集中すべき回答の中身そのものに集中しやすい環境にしていくことができます。
まだまだやりたいことはあるのですが、まずはこの1年、順調に運用・改善できています。また、自分自身でもサポート業務をやることもあるのでその中で気づいたことや、みんなのサポート業務を見ている中で感じた課題を、さっと取り込んでいけることも大きなメリットです。
「11人の会社でそこにリソースを割くのか」と言われがちですが、サポートは、board事業の中で開発と同様にコアな業務なので、それだけリソースを割く価値がある部分だと思っています。
実際、今でも自分自身の時間のうち2〜3割程度はサポート関連(エスカレーション、毎日のフィードバック、ヘルプ改善、トレーニング等)に割いているので、そのくらいの位置づけで考えています。
また、技術的には、board本体に適用する前の実験の場にもなっていたり、boardとは違う技術的なニーズがあるので、エンジニアがboard本体とは異なる経験を積めるのもメリットのひとつです。
開発体制の強化
現在は自分を入れて3人がほぼフルでboard本体の開発に関わっているので、過去最高に体制が厚いです。
とはいえ、どんどん機能追加して範囲を広げていくのではなく、今のコアな範囲をしっかり改善強化したり、中長期的な視点で、内部的な改善などにも多くのリソースを割いています。
たとえば、今後のメンテナンス性・拡張性などのために、既存機能のコードをゼロから書き直しつつ、自動テストを整備しつつ、要望を取り込んで機能追加・改善していくということをやっています。最近はこのパターンが多いです。
サポート体制の変化
現在4人体制になっています。
有料1300社くらいまでは自分ひとりで開発からサポートまでをやっていたので、当時からは考えられないくらい、しっかりとした体制になってきました。
4人それぞれ経歴・強みが異なり、直近の4人目は経理経験者が入ってくれたこともあり、チーム全体としてはだいぶ穴がなくなってきたなと感じています。
ちなみに4人目はこんな感じで、「人手が足りないわけではないけど、チームを強化する狙い」で募集していました。
とくにここ1年ほどは、僕もかなりの時間を割いて、1人1人のレベルの底上げをしてきました。その結果、僕がやるより良いレビューや良い回答が増えてきており、だいぶいい感じになってきたのではないかなと思います。
ここ2年ほどは、僕自身は日常的にサポートに入ることはなくなり、CSメンバーの休みが重なった時や、たまにある異常に問い合わせが立て込んだ時にサポートに入る、バッファー的な役割になっています。あとは技術的なこと・難しい内容・細かい仕様の確認などのエスカレーションが、あっても1日数件ある程度になりました。
僕がお役御免になる日も近いのではないかと。
細かい改善の蓄積と問い合わせへの影響
boardでは、半年ごとに開発ロードマップを公開していますが、ここに記載しているのは大きい機能のみで、これ以外にも、ほぼ毎週何かしらの改善をリリースしています。
その内容は様々なのですが、そのうちの1つとして、「ここを少し改善すれば、関連する問い合わせがなくなりそう」というものがあります。
わかりにくい箇所、つまづきやすい箇所、間違えやすい箇所などの改善や、ちょっとした文言の変更だけで、それに関連する問い合わせがほとんどなくなることもあります。
今でも毎日すべての問い合わせには目を通しているので、そういう問い合わせを見つけたら、改善するようにしています。この蓄積が、問い合わせ量の増加ペースをかなり抑えることに繋がっているような気がしています。
有料登録社数が約半分程度だった頃と比べて、月の問い合わせ数はほぼ同水準で、増加を抑えられています。その代わりに、以前に比べて簡単な問い合わせが減りました。
この傾向は、簡単な問い合わせはせずに済むようになっている(つまづきやすい箇所が減っている)と捉えています。その結果、CSチームがより付加価値を発揮しやすい問い合わせに集中できるようになっているので、とても良い傾向だなと思っています。
boardの事業的な話
月の有料登録数はほぼ同水準
現在はだいたい1ヶ月半〜2か月に100社増えるようなペースで、この増加スピードは、ここ2〜3年は同水準で、厳密には2020年前半ごろの方が良かったかなと思います(これはコロナ禍の影響もありそう)。
コロナ禍直後の数ヶ月は多かったなど、月単位で見るとわりと上下は激しいのですが、均してみると「1ヶ月半〜2か月くらいで純増100社」というペースです。
boardは「営業をしない(いない)」「広告を出さない」「露出の機会がほとんどない」「お試し登録後もこちらからアプローチはしない」というスタンスでやっています。そのため、基本的には口コミや検索からの流入のみなので、このやり方だと、1ヶ月あたりの新規有料登録数はこの辺りで頭打ちなのかなあという気がしています。
とくに数値目標を立てているわけではないので、伸ばすために積極的になにかに取り組んでいるということはないのですが、アカウント登録や有料転換が増えるよう細かい改善・施策を多少はやってみています。ただ、あまり結果は出ていませんが・・・。
11人の会社からすると、このくらいのペースで増えていれば十分なのですが、なんとなく「1ヶ月新規有料登録100社」というのを継続的に達成できると良いなあくらいに考えています。
*過去に2回だけ、1ヶ月で新規有料100社を超えた事がある
とはいえ、今、そういう方面の専門メンバーはいないですし、自分自身は開発・サポートの方に時間を割いているので、当面は継続的に「1ヶ月新規有料100社」は難しそうだなあと思っています。
有料継続率の改善
2014年のリリース以降、ほとんどの期間において有料継続率は99%を超えています。99%を切った月が何度かあったのですが、だいたい3月でした。年度末で整理をしたり移行をしたりタイミングなのかなと。
以前は99%台前半が多く、最近は99.5%前後のことが多くなってきているのですが、改善している理由はよくわからないです。
業務システムは、合わなければ無理に使うべきではないので、解約を防ぐための施策というものは一切やっておらず、最低契約期間の縛りもないので、いつでもさらっとやめられます。
仕組みにとくに変化はないはずなのですが、なぜか解約率が減っています。
強いて言えば、「最初にアカウント登録する部分」のアプローチが少し変わった影響かもしれないです。
「興味を持ってもらったらアカウント登録へ促す」というのが基本だと思うのですが、業務システムは、その思想・特性などが合っていないと絶対にうまくいかないと思っています。そのため、会員登録の動線を減らして、「どういうサービスなのかを理解してもらう(読んでもらう)」「会員登録よりも個別相談会への参加やチュートリアル動画を見てもらう」という動線を増やしました。
会員登録よりも、事前に特徴を把握してもらうという逆のアプローチです。
その結果、そもそも合わなかったというケースが減った(ある程度納得して使い始めるケースが増えた)のではないかなと。
元々boardの解約率が低いのも、営業をまったくしていないので、背中を押されて契約するということがなく、ある程度、自分のペースで試した後に使い始めるからなのではないかなあと思っていたりするので、それと同じようなイメージです。
あとは、実際にお知らせとして出している機能追加・改善以外に、何倍もの細かい改善を毎週行っているので、そういった積み重ねの結果だったら、作り手としては嬉しいなと思います。
その他の取り組み
アクセシビリティー
2019年5月に、色覚特性(P型・D型)の方にも識別しやすい配色にする「カラーユニバーサルデザイン」に対応しました。
これ以降は、とくにアクセシビリティー関連の取り組みはできていなかったのですが、2021年終わり頃から、Webアクセシビリティー全般の改善の取り組みを始めています。
ディーゼロさんに支援してもらいながら、毎週のデプロイの中で少しずつ改善していっています。
GitHub Sponsors
主にboard関連でお世話になっているOSSに対して、GitHub Sponsorsを使ってスポンサーする取り組みを始めました。
まとめ
基本的なスタンスは今まで通りで、とくに目新しいこともなく、毎回読んで頂いている方からすると、とくに代わり映えしない内容だったかなとは思います。淡々といつも通りのペースでやっています。
ただ、内部的には、だいぶ社内の体制が強化されてきたなという感覚があります。ようやくといえばようやくなのですが。
現在のboardチームは、エンジニアとサポートしかいないので、事業を行う上で必要なそれ以外のことは、基本的には僕がやっています。そのため、今後より安定した事業運営をしていく上では、セキュリティー・品質管理・外向けの活動全般(個別相談会やマーケなど)あたりを任せられる人がそれぞれ1人ずついると、かなり強いのだけどなあと思っていたりします。いつか良い縁があれば。