ヴェルク - IT起業の記録

受託開発と自社サービスの両立への取り組み

自分の身体が少し(たぶん一時的に)不自由になって感じたアクセシビリティーのこと

アクセシビリティーへの取り組みのモチベーションの1つとして、「今そう(当事者)でなくても明日そうなるかもしれない」という話を聞くことがあります。

たとえば、以下、ゆうてんさんのブログの引用です。

自分が当事者である場合、もしくは身近な人が当事者の場合は当然その必要性はすぐに理解できると思います。しかしそうでなかった場合でも「今そうでなくても明日そうなるかもしれない」と考えると少し違った見え方になるかもしれません。病気や事故はいつ起こるかわかりません。1人でも多くアクセシビリティの向上に取り組めば、将来その恩恵を受けることできる可能性が上がります。
引用:アクセシビリティの琴線に触れるいくつかのアプローチ

 

ここ1年ほど、自分自身がこれを経験することになったので、それについて書いてみようと思います。

自分の身体に起こったこと

2024年12月ごろから、膝に痛みを感じるようになりました。最初は「ジムのスクワットで痛めたかな?」と思っていたのですが、1ヶ月ほど様子を見ても治らず、整形外科に行き、色々と膝の検査やリハビリを行いました。

ただ、膝はまったく問題なく、そうこうしているうちに、2025年3月くらいから、指・足首・股関節などの主要な関節が固まるような症状(関節のこわばり)が発生し、「これは膝だけの問題ではないね」ということで検査の方向性を変更しました。

症状としては、リウマチ・膠原病が近いものだったので、それらの検査をしたのですが問題なし。念のため地域の総合病院に紹介状を書いてもらって検査したのですが、やはり問題なし。

5月・6月ごろが一番ひどく、階段は手すりにもたれかかるくらいでないと上り下りできなくなり、椅子の立つ・座るもほぼ手でコントロールしているくらい、膝に体重がかからないようにする必要がありました。

また、朝は指や股関節が固まってしまって動かない。1時間ほど椅子に座って仕事をしていると、股関節や腰が固まってしまって動かない。

歩行もかなりきつく、普通の速度で歩くと10分〜15分くらいが限界。そのため、普段は半分くらいのスピードでしか歩けず、お年寄りに颯爽と抜かれて行っていました。

その他色々あったのですが、とにかく、日常生活にかなり支障があるような状態でした。

この状況で困ったこと

普段の生活で困ったことをいくつか紹介します。

階段での移動

自宅の階段は手すりにもたれかかりながらゆっくり移動すれば良いのですが、駅やビルの階段などはそうもいかず、とはいえ、とくに地下鉄のエレベーター・エスカレーターはどこにでもあるわけではないので、地下鉄に乗りたくない状況でした。

また、オフィス街のランチは、小さい雑居ビルに入っているお店も結構あると思いますが、2階くらいだと階段だけのことも多いです。普段よく行っていたお店に行けず、エレベーターがあるところだけが選択肢になりました。

普通のスピードでは歩けない

自宅から最寄り駅までは、そんなに人もいないのでゆっくり歩いて行けば良いのですが、都内の駅やその周辺は人がとても多いので、基本的に人の流れに身を任せて進んでいくしかありません。

杖をついている等ではなく見た目は普通なので、人混みでゆっくり歩いていると舌打ちされたり押されたりします。

そのため、ほぼ強制的に普通の速度で歩かざるを得なくて、かなり厳しかったです。目的地に着いた後、しばらく動けなくなっていました。

駅のエレベーター・エスカレーターの位置が駅によってバラバラ

たとえば、乗車駅のエスカレーターは駅の前方にあり、降車駅のエスカレーターは駅の後方にある、というパターンがわりとあるんですよね。その結果、膝が痛くてあまり歩けないのに、ホームの前から後ろまで歩いて行かないといけない、みたいなケースにそこそこ遭遇しました。

よく使っている駅がこのパターンで、これまで気にもしたことなかったのですが、当事者になって初めて気づきました。

長く座っていられない

ひどい時期は、30分〜1時間ほど座っているだけで、股関節が固まってしまい、ゆっくり少しずつ動かして立つ、というようなことをしていました。

普段自宅やオフィスでそれをやるなら良いのですが、電車などではなかなかきつかったです。

「ヘルプマークでも付けたら?」と言われたこともあるのですが、席に座ると固まってしまう問題があるので、座っていた方が良いのかはなんとも言えない状況でした。

ちなみに立っていたら立っていたらで、つり革に捕まっている形で指が固まってしまい伸びなくなるので、それはそれで困ります。

とにかく、電車で移動するというのがハードルが高かったです。

ペットボトルを開けられない

これは一番ひどかった時期だけですが、ペットボトルすら簡単には開けられないような状況でした。

とはいえ開けないと飲めないで、気を溜めて、覚悟を決めてチャレンジするという感じです。

そういえば、たまたま流れてきたツイートか何かで、「高齢の母が水を買いに行かなくて済むようにペットボトルの水を送ったら、全然飲んでいなかった。理由を聞いたら、ペットボトルを開けられないと言っていた」という主旨のものを見かけたのですが、まさにこれでした。

ペットボトルを開けるのは、思いのほか力が必要です。

仕事への影響

指が固まってしまう症状があったので、当初は、仕事ができなくなることをすごく懸念していました。

2025年はAIによるコーディングが普及した年だったので、「指が動かなくなった場合、音声入力で直接コードを書くのは無理そうだけど、AIでVibe codingしてプロトタイプを作るところまでならできるんじゃないか。その場合、開発者としては引退して、プロダクトマネージャーとしての役割に軸足を移すか」などと考えていました。

ただ、結果的には、なぜかキーボードを打つ指は平気だったので、わりと普通に仕事してました。

「動かさないと固まる」「負荷がかかると痛い」という状況だったので、キーボードを打っているときは動かしているので固まらないし、それほど強い力もかからないので痛くもないという感じだったのかなと。

また、基本的には、自宅かオフィスで籠もっていて外出することは稀だったので、大きく影響せずに仕事を続けることができていました。

たぶん、この仕事ではなく身体を動かす仕事だったらダメだっただろうなと思います。

現在は・・・

2025年夏ごろからは、ピーク時の5〜7割ほどの度合いで推移していて、まだまだ日常生活に支障はあるのですが、多少はマシになりました。

8月から千葉大学医学部付属病院の総合診療科にかかっていて、おおよその方向性を絞った後、内分泌内科で検査して、発症から約1年経った11月下旬にようやく「医原性副腎皮質機能低下症」と診断が付きました。

ざっくり言うと、副腎機能の低下により、必要なホルモンの生成ができなくなって、様々な症状が出ていた、という状況でした。

副腎機能の回復を直接的に治療はできないので、不足している分を服薬で補いつつ、ゆっくりと副腎が回復するのを待つというかたちのようです。

ただ、おそらく服薬によって、この後は普通に動けるようになるのではないかなと思います。

*ちなみに、千葉大病院の総合診療科はよくテレビで取り上げられているようですが、とても良かったです。「診断のついていない症候」を専門に扱う科で、最初は自由診療なのでコスト的なハードルが高いですが、半日かけて複数の医師とみっちり話をして、様々な可能性を探るということをやりました。今までの医療体験にはない新しい体験でした。

まとめ

「アクセシビリティー」というトピックに絡めて書きたかったのですが、結局、冒頭以外は大して関連した話になっていないですね。

当たり前のことが、突然できなくなるというのは、あり得るんだなということを痛感した1年でした。

とくに、都内の移動の大変さはかなりきつくて、だいぶ心が折れていました。

普段、仕事で取り組んでいるアクセシビリティーは「Webアクセシビリティー」なので、システムの中の話なんですよね。なので、これまで社会の物理的な部分でのアクセシビリティーについて、それほど深く考えたことはありませんでした。

一時的にそれを経験した程度ではありますが、「今そう(当事者)でなくても明日そうなるかもしれない」というのは本当にそうだったので、様々な箇所で、アクセシブルな世の中であってほしいなと感じた1年でした。