ヴェルク - IT起業の記録

受託開発と自社サービスの両立への取り組み

11期振り返り

2021年11月に11期が終わったので振り返りです。

期末はみんなで美味しいものを食べに行くのが恒例でしたが、コロナ禍で、10期に引き続き今回も行けず。次は行けると良いなあ。

board

2021年12月15日現在、boardの有料登録社数はもうすぐ3800社で、1年間で約700社ほど増えました。これまでと同様、営業はせず広告も出さずに地道にやっています。

基本的なスタンスは変わらず、「10人の会社で1万社が使うサービスを目指す」というかたちで、会社の規模をどんどん大きくしていくのではなく、人数に依存せず、手を広げすぎず、地道にサービスを良くしていこうというスタンスでやっています。

「継続できること」がとにかく大事だと思っているので、システムそのものだけでなくサポート等も含め、持続可能なペースで継続的に改善・強化に取り組んでいます。

開発

電子帳簿保存法対応などがありましたが、既存機能のリニューアルが多かった1年でした。既存機能に関して、多くの要望を取り込みつつ、ゼロからコードを書き直してきれいにしつつ、自動テストもしっかり整備し直すということをセットでやっています。

boardもそれなりに長くやってきているので、機能追加や要望対応にあたって、既存の実装の延長線上で対応していくのか、ゼロから書き直すのかを考えることが多くなりました。とくに古い実装の機能などは積極的に書き換えていくようにしています。

昨年入ったメンバーのおかげで、内部的な改善がどんどん進んでいるので、「リニューアルによる機能強化 + 内部的な改善」というのは引き続きセットでやっていきたいなと思っています。

カスタマーサポート

現在3人体制で、12月下旬からもう1名増えて4人体制になります。

今年は、CSチーム内でのレビュー運用が軌道に乗ったことが、非常に大きな成果だったなと感じています。

以前から、サポート時間終了後に30分〜1時間程度の「振り返り」を行って、他のメンバーの回答をチェックしたり、改善点などを毎日話していましたが、ここ半年ほどは意識的に「回答前に積極的にレビュー依頼をする」ということをやるようになりました。

簡単なものは各自で回答しますが、内容に応じて、他のCSメンバーにレビュー・校正をしてもらった上で回答することが増えました。その上で、必要に応じて、僕にエスカレーションすることもあります。

このレビューによって

  • 質問者のゴールに関して認識ズレの防止
  • 回答の過不足チェック
  • わかりにくい文章の改善

などの効果があり、全般的に、回答品質が向上したように思います。

また、僕へのエスカレーションについても、従来は「各自で考える→エスカレーション」でしたが、間にCSチーム内でのレビューが入ることによって、CSチーム内で解決できることも増えました。

もともと「2:1の運用」といって、3人いるうちの1人を余らせることをやっていました。

この1人は朝一の問い合わせが落ち着いた後は「他のメンバーの回答を後追いでチェック」「仕様や業務知識のインプット」などの時間に当てていました。そのため、上記のように積極的にレビューを入れるようになっても、問題なく回っています。

ただ、当然ながら回答前にやることは増えたため、「2:1の運用」のうち、とくに「仕様や業務知識のインプット」のための時間が確保しにくくなってしまっているので、この辺のバランスが次の課題です。

また、下記のように、バックオフィス(主に経理)経験者をサポートとして募集し、無事に12月下旬から入社が決まりました。

tamukai.blog.velc.jp

業務知識・経験のある人がCSチーム内にいることで、回答精度や他のCSメンバーの業務知識向上が期待できます。また、僕自身も、仕様を考える際などに相談できるため、サポートだけでなく、プロダクトそのものの改善にも繋がりそうで楽しみです。

問い合わせ窓口のシステムを自社開発

問い合わせ窓口の仕組みをintercomから自社開発に切り替えたのが大きなトピックでした。

tamukai.blog.velc.jp

「そこに開発リソースを割くの?」とよく聞かれますが、サポートはそのくらいコア業務だと思っていて、サポート品質のさらなる向上と安定のためには、システム的に支援できることをどんどんやっていきたく、自社開発に切り替えました。

半年ほど運用していますが、さっと業務改善できたり、ミス防止の対策を入れられたり、シームレスなかたちでTextlintを組み込めたりと、非常に満足度が高いです。また、この結果、サポートチームのストレス低減にもなっていて、これも非常に大きいです。

サポートが価値を発揮できる部分に注力できるよう、システム的に解決・補助できるところはどんどんやっていきたいと思います。

また、エンジニア的視点では、技術選定を含めゼロから開発する機会にもなったし、若いメンバーがシステム全体を考える場にもなっています。「サポートシステムで実験的に導入→良さげだったらboard本体に導入」ということができるのも、そういう役割も担っています。

アクセシビリティー

2019年にカラーユニバーサルデザイン対応(色覚特性を考慮した配色)の対応をして以降、これといってアクセシビリティー関連に取り組めていませんでしたが、下記にアナウンスした通り、本格的にWebアクセシビリティーの改善に取り組んでいこうとしています。

the-board.jp

現在、主要ないくつかの画面のアクセシビリティーテストを依頼し、そのフィードバックをもとに、順次改善していっているところです。

「board、スクリーンリーダーでもそこそこ使えるじゃん」ってなるまでにはもう少しかかりそうですが、道筋というか、やらないといけないことはある程度見えてきたかなあと思っています。

アクセシビリティーの取り組みは、ディーゼロさんにアドバイザーをお願いしていて、とても助かっています。具体的な改善方法を相談させて頂いたりもするのですが、そのやり取りの過程で、アプローチや考え方を学べるのが非常に大きいですね。その積み重ねによって、普段開発する際に自然に考えられるようになってくると思うので。

売上構造の変化

最近はすっかりboardの会社のイメージが強いですが、もともとは受託開発の会社で、今でも受託開発やデータ分析支援等の事業は引き続きやっています。開発系はあまり新規では受けられていませんが。

boardを始める少し前ごろから「売上の座布団を増やしていく = ストック売上を増やしていく」という方針を立てて、7年ほど経った現在、boardを中心としたストック売上が8割を超えて、かなり強固な収益基盤ができてきました。

データ分析事業の方は、大阪大学 高等教育・入試研究開発センターとの取り組みの成果が出てきており、大学を中心に順調に伸びています。

労働集約型の割合の低下に合わせて、ここ数年で「勤務時間を1時間短くする」「有給は入社初年度から20日」などの改善を行いました。アウトプットの量・スピード・勢いなどで勝負している会社ではないので、じっくり腰を据えてやれる環境になってきているなと思います。

11期は賞与もかなりしっかり出せて、それが単発ではなく継続できるような事業基盤・収益構造になってきているし、ようやくここまで来たなあという感じです。

うちの会社は、とくにミッションみたいなものはないし、自分自身も「こういうことを実現したい」みたいな強い思いでやっているわけではないのですが、「(できるだけ短い時間で)普通に働けば、十分な収入を得られ、しっかり家族との時間を取れる」というのを当たり前にできるようにしていきたいと思っています。僕の役割は、それを安定的に実現するための事業を作っていくことと考えており、それがだいぶできてきたかなあと感じています。

データ分析と受託開発事業

ここ数年、僕はほぼ関わっておらず、たまに相談にのるくらいで、基本的には取締役の津久井が仕切っています。

受託開発の方は、体制的に新規で受けられないため、ほぼ既存のお客さんが中心です。

データ分析の方は、当初は小売から始まったものの、最近は大学関係がメインになっています。

そういえば、boardとデータ分析の事業は、基本的にほぼ交わっていないんですよね。boardの分析機能を開発した際に意見をもらったり、逆に、boardの開発に関わっているメンバーがデータ分析関連の技術的な部分をサポートしたり。そのくらいなので、もう少しうまく絡めていけると面白いかなあと思っています。

採用

前述のCSメンバーを募集してたので、約1年半ぶりに採用活動をしましたが、採用が決まったのでクローズしました。次の募集はいつになるだろうか。

「10人の会社で1万社が使うサービスを目指す」と言っているのに11人目なのですが、「10人」という数字自体はそれほど重要ではなく、「人数に依存しない(人数で解決しようとしない)事業運営」というための目安なので、今後も、チームを強化できる方と縁があれば採用するかもしれないです。

数年後には、おそらくCSメンバーを増やす必要性が出てくると思っていますし、QAやセキュリティーエンジニアが欲しいなあというのはずっと思っていたりします。あとはデータ分析事業の方でも採用したいという話があったり。

CUDOの賛助会員やGitHub Sponsors

2019年にboardのカラーユニバーサルデザイン(色覚特性を考慮した配色)に対応して以降、チェックをお願いした「カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)」の賛助会員となっています。直接的な活動はできていませんが、毎年少しずつ増額しつつ、資金的な面で継続的に支援しています。

また、GitHub Sponsorsを使って、OSS開発者のスポンサーも始めました。

tamukai.blog.velc.jp

こういった活動は今後も継続していきたいと思っています。

まとめ

boardは「みんなに70点台のサービスではなく、フィットする人に90点台のサービスを」というのが基本スタンスなので、今後も継続して、今の領域を中心に強化していきたいなと思っています。またカスタマーサポートもサービスの一部と考えているので、同様に、より強化していくための取り組みを継続していきたいと思います。

基本的なスタンスは今までと変わらないのですが、メンバーを含め、より良くしていける環境が整ってきていて、楽しみだなあという感じです。