ヴェルク - IT起業の記録

受託開発と自社サービスの両立への取り組み

8期振り返り〜自社サービスのアサイン割合が受託を超えた年

2018年11月に8期目が終わったので振り返りです。

前期は、僕の交通費の経費精算回数が1桁という、あり得ないくらいオフィスに引きこもって、ひたすら開発とサポートをやっていました。ベンチャー社長の中でトップレベルで外出しなかった自信がありますw

それくらい、開発・サポートといった手を動かす方に集中していたわけですが、「受託の会社が自社サービスを立ち上げていく」という取り組みの中で、ビジネス構造としては大きな転換期だった1年でした。

 

売上構造の変化

8期は売上・利益ともに過去最高でしたが、その額よりも、売上構造の変化が、自分の中で一つラインを超えたと感じています。

5年ほど前から、「売上の座布団を増やす」と言って、ストック売上を積み上げていくことを目指していました。

受託ビジネスは納品基準で請求することが基本なので、どうしてもキャッシュフローに波があります。そこで、経営を安定させるために、ストック売上を増やして波を小さくしていこうという狙いです。

8期は、このストック売上の割合が約6割になり、初めて半分を超えました。自社サービス(board)の伸びが一番大きいのですが、それ以外にも保守をはじめ、その他色々と積み重ねた結果です。

今期はストック売上が7〜8割ほどにはなる見込みで、売上構造が受託の会社のものではなくなり、だいぶ直近の売上に振り回されずに済むようになってきました。

これにより取れる選択肢が広がるので、事業を展開していく上でとても大きく、強い経営基盤ができてきていると感じています。

 

受託と自社サービスのアサインの割合

現在うちの会社は、取締役2人を入れて8人ですが、一人は11月に入社したばかりなので、8期は実質7人でした。

内訳は、受託メインが3人、自社サービスメインが3人、総務兼自社サービスが1人と、初めて自社サービスへのアサイン割合が受託を超えました。

自社サービスの事業を進めていく中で、「受託の利益を食いつぶしながらやるのではなく、自社サービスの売上の中でまかなえるアサインで事業を進めていく」というのを基本スタンスでやってきました。

売上が少ない初期の頃は、僕が自社サービスをやりつつ足りない分は受託で稼ぐということをやっていて、ある程度売上が上がるようになってきてからは、その売上でまかなえる範囲で他のメンバーを少しずつアサインしてきました。

そのため、「自社サービスに投資するから一気にリソースを増やす」ということはやっておらず、身の丈にあった形で少しずつ社内の体制も変化させてきたので、この割合が逆転したというのは、自分の中ではとても大きな出来事でした。

 

受託

7期(前々期)から、僕はboardの方が忙しすぎてあまり受託に入れてはいなかったのですが、7期の頃は営業だけは入っていたりしました。

ただ、8期は営業も入ることはなく、昔からやっている3案件のみ引き続き持っているだけで、基本的にはもう一人の取締役(津久井)が中心になって進めています。

受託は好きなので完全に離れつつもりはなかったのですが、boardの方が順調なこともあり、時間が足りなすぎるということで、完全に離れる方向で体制をシフトしています。

ここ2年ほどかけて受託体制の転換を行ってきて、うまく切り替えられたかなと思っています。

また、受託の内容も、以前はわりとなんでも受けていたのですが、最近は関わる人数が減ったこともあり、津久井がずっとやってきたデータ分析支援(小売・大学など)を中心にやるようになってきました。

 

board

boardは、12/5に有料1700社を突破し、1ヶ月半〜2ヶ月に100社のペースで増えています。

初期の頃は、どうやって伸ばしていくかということを試行錯誤していましたが、ここ2年ほどは、営業もせず広告も出さず、「売る気あるの?」って言われたりするのですが、自分自身、営業は得意でも好きでもないし、SaaSなので営業せずに売れる仕組みを作っていこうという思いでやっています。

前期は普段どおりの機能追加・改修は続けつつ、以下のことをやっていました。

  • パフォーマンスの向上
    元々わりとサクサク動いていましたが、速さは最大のUXなのでさらなる高速化への取り組み(今後も継続していく予定)
  • 自動テストの本格的な整備
    これまでほとんど書いていなかったので、単体〜E2Eまでをかなり時間をかけて一気に整備
  • ライブラリのアップデートを日常にする
    自動テストを整備したことにより、Dependabotを使ってライブラリのアップデート間隔を短くする運用を開始
  • テストケースの整備
    僕の中に品質管理のノウハウが閉じてしまっているので、それの整理とアウトプット
  • DR(ディザスタリカバリ)のための取り組みを始める

前々期まではほぼ自分一人で開発してきましたが、前期はもう一人を1年間フルアサインできたので、今後に繋がる内部的な改善などに取り組みました。ちなみに、リリースは年間で40回ほどだったので例年よりも少し少なかったです。

boardは契約社数が1700社を超えるまでに成長してきたので、もう立ち上げのフェーズではなく、今後は、いかにして、品質を落とさず安定して継続開発できるか、そのための土台整備にある程度時間を割き、これは今期も継続していきます。

また、今後はそれに加え、SRE・DRといった、さらなる安定性・耐障害性を高めていくための取り組みをしていきたいと思っています。

「どんどん機能追加をして拡張していくフェーズ」から、「機能追加・改善は継続しつつ、完成度・使い勝手のさらなる向上や非機能要件的な内容をもう一段レベルを上げていこう」というイメージです。

ちなみに現時点で安定性・耐障害性などに課題感があるわけではないのですが、少ない人数で回していくことを考えると、この部分はとても重要で、そこを更にレベルアップしていこうとしています。

 

ユーザさんは、「同じレベルやちょっと良い程度」であれば有名な方・大きい会社の方を選ぶと思っています。

そのため、うちみたいな小さい会社が戦っていくためには、完成度・品質・ユーザ体験などが生命線で、これまでもそれで戦ってきたつもりですが、それをさらに追求していくつもりです。

 

採用

前期は初めて1年間で二人採用をしました。二人ともboardのCSです。

一人は3月に入社し、もうだいぶ軌道に乗ってきています。夏以降は僕ではなくほぼ彼が回答しています。

 

その後は募集はしつつも、急がずに「いい人がいれば」というスタンスで考えていました。

一人目のCSメンバーに色々と教えていた過程で、boardのCSに必要なことや考えが整理されてきて、それが「読解力」「想像力」「日本語力・文章力」でした。

最近のカスタマーサクセスの流れとは全然違いますが、やはり会ったこともない、背景も知らない、立場も知らない人からの問い合わせから、「本当にやりたいこと」を読み解くのはとても難しく、CSの本質は「ユーザさんが本当にやりたいことを正しく把握して、正しく説明すること」なので、様々なKPIを追うのではなく、もっと本質的な「読解力」「想像力」「日本語力・文章力」の強化というところに行き着きました。

ただこれが本当に難しくて、でもCSの8割はこれだと思っているので、他のことは置いておいて、ここにだけフォーカスしていこうという方針でやっています。

というようなことをツイートしてたら、長らくフリーランスで編集者をやっていた@note103 の目に止まり、CSとして入社してもらうことになりました。この辺の経緯は、@note103のブログをぜひ。

note103.hatenablog.com


ということで、CSは二人体制になり、また社内で文章力・日本語力を強化していく体制もできたので、今期は僕がCSから徐々に離れていき、二人で回していける体制に移行できればと思っています。

 

CSはある程度目処が立ってきたので、今後の採用のメインはエンジニアです。

会社規模は10人前後までと考えているので、エンジニアはあと二人くらいのイメージです。

スタートアップ的な勢いでやっているわけではないし、やっぱり無名の小さい会社は採用が大変すぎるので、「人手が足りないからリソース確保のため」の採用ではなく、「うちの会社やサービスをよりレベルアップさせることができるいい人がいて、カルチャーに合えば」というスタンスでじっくりいこうと思っています。

ご連絡頂いて1〜2時間ほどラフに話をするといった感じのこともよくあるので、少しでも興味がある方がいれば、Twitterコーポレートサイトから気軽にご連絡頂ければと。

 

特にboardに関しては、前述した通り、機能面・非機能面ともに、現時点でわりとしっかりしたレベルでできていると思っていますが、これを更にレベルを上げていきたいと思っています。

そのため、スタートアップ的なスピード感というよりは、時間をかけて、通常より高いレベルに引き上げていくようなスタンスで仕事をしたい方の方が向いているかもしれません。

直近では、品質管理やSRE・DRなどに力を入れてやっていくので、この辺が強い方はぜひといったところですが、小さい会社なので、特定分野だけということはなく、「事業に必要なことをやっていく」スタンスになると思います。

 

今後の方向性

よく「受託はまだ続けるの?」と聞かれるのですが、今のところやめるつもりはありません。

受託をやりたいメンバーもいますし、boardだけをやっていると、どうしても知識・経験の幅が狭まってしまうと思っています。

boardは、僕のこれまでの十数年のコンサル・受託の中でお客さんの業務を数多く見てきた経験がとても役に立っていて、これがあるからこそ考慮できるものがたくさんありました。

うちの会社は、僕自身を含め、何か特定の技術や分野に特化するようなタイプはいないので、技術的にも業務的にも、常に引き出しが増えていく環境があることはとても大事で、そういう意味で、受託はとても大きな役割を担っていると思っています。

baordに関しては、「10人の会社で1万社が使うサービスにしていく」というのを最近よく言っています。

これは成長や売上のための数値目標ではなく、「営業・運用に人手をかけない仕組みを作っていくため」の目標みたいな位置づけです。

これについては、また別途詳しく書きたいと思います。