2019年11月に9期が終わったので振り返りです。
9期は新元号対応・消費税の税率変更・軽減税率対応などのイベントが盛りだくさんだったこともあり、8期に引き続き、また僕の交通費の経費精算の回数が年間で1桁という、相変わらずの引きこもりっぷりで開発をしていました。
個人的には、税率変更・軽減税率対応の印象が強い年でしたが、会社の状況としては、かなり変化があった1年でもありました。
売上構造の変化
9期は売上・利益ともに過去最高でしたが、売上の構造がかなり変わってきました。
まず、自社サービスのboardの売上が、受託・コンサルなどの外の仕事の売上の合計を超え、board+αのストック売上が全売上の7割強になりました。
boardを始める前から「ストック売上(売上の座布団)を増やしていく」ということを社内で言い始め、保守を中心に少しずつ積み上げていくところからスタートしたのですが、ストック売上がここまでくると、かなり強固な収益基盤になってきたように思います。
もともと、受託で上げた利益を食い潰しながら自社サービスを開発するということはやらず、自分が、必要な分の売上を受託で上げる傍らで、boardの開発をスタートしました。
そのため最初の数年はほぼ1人でしたが、boardで売上が上がるようになってきたら、少しずつ他のメンバーをアサインしたり、CSメンバーを採用したりと、あくまで、boardの売上でまかなえる範囲でアサイン・採用をしてきました。
ただ、boardの売上がここまで来ると、そういったことを気にせず、余裕をもって事前に採用ができます。
たとえば、1月からCSメンバーの入社が決まっていますが、現時点では2人で十分回せているものの、どうしても、新しい機能や業務知識などのインプットの時間が安定的に確保できないことから「3人で2人分の問い合わせ量を対応する体制」を目指した採用です。
5年かかってようやくここまで来たなあという感じです。
board
現在のboardは以下のような状況です。
- boardは、見積書・請求書の作成から業務管理・経営管理などを行うことができるサービスで、主に数人〜数十人規模の中小企業がターゲットユーザ層
- 有料導入社数はもうすぐ2500社
- 弊社は現在8名の会社で、boardへのアサインは、自分含めエンジニア3名(1名は10月から)、CS2名
- 営業や広告などはせず、基本的にインバウンド頼み
今年は税率変更・軽減税率対応が一番大きなトピックでしたが、その対応だけだとユーザさんにとって何も便利にならないし、boardも強化されないので、その対応だけするのも癪ということで、この対応に合わせて「PDF出力結果(見た目)のテスト自動化」や「会計連携機能をゼロから作り直して大幅に強化」などを行っていました。
会計連携機能は、今の設計思想としてはなかなかよくできたのではないかなと思っていて、以下のようなコメントも頂いています。(個人的にここを評価してもらえるのはとても嬉しい)
それから #board の会計連携機能も非常によく出来ています。勘定科目や税目などを非常に細かく設定できるます。
— 武内俊介@業務設計士 (@Libero_shunsuke) October 19, 2019
この機能はかなりマニアックなので、さすがに簡単に、とはいきませんが、ヘルプも充実しているので、ちょっと高度な連携をさせたい人にもお勧めです。
変わらないboardのスタンス
相変わらず、「boardにどんどんリソースを投入して一気に伸ばしていく!」みたいな雰囲気は1ミリもなく、これまで通り、淡々と、開発・サポートに注力しています。
事業において銀の弾丸はないというか、「何かすれば急に売れる」「何かすれば急にプロダクトが良くなる」とか、そういったものはないと思っているので、派手なことは考えずに、粛々と、開発・改善を続けていくのみだと思っています。
ちなみにboardのリリース回数は、
2014年:25回
2015年:36回
2016年:43回
2017年:49回
2018年:39回
2019年:52回(執筆時点では予定)
という感じで、ずっと1〜2週間に1回ほどのペースでリリースを続けています。
開発ロードマップにあるような機能追加はそれほど多くないですが、既存機能の改善は随時行っているようなイメージです。
基本的に、何かを急ぐために普段よりアクセルを踏むということはせず、持続可能なペースで継続できることを優先した進め方で、最終的には、自分たちの力を継続的安定的に発揮できる方がずっと良い結果を生むと思っています。
ここ数年、営業もせず、広告も出さず、基本的にはインバウンドで入ってくるのを待つ受け身のスタンスで、それでも年間で、有料契約が700社以上増えているので、自社の特性やメンバー構成を考えて、この「やり方もありなのでは」と思っていて、当面はこのままいくつもりです。
カラーユニバーサルデザイン対応
個人的に一番思い入れがあるのがこれです。
boardで、色弱・色覚特性などと称される色覚「P型・D型」の方にも識別しやすい配色にするカラーユニバーサルデザイン(CUD)対応を行いました。
NPO法人「カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)」に検証を依頼し、同機構が発行するカラーユニバーサルデザイン認証を取得しました。
この取り組みについては、ぜひ下記をご覧ください。
boardのサポート
前期の1番の変化は、サポートが僕の手から離れたことかもしれません。
有料1300社くらいまで僕1人で対応していて、昨年3月と11月に入社した2人に徐々に引き継いでいき、今年の途中からは、基本的には僕は入らず、CSメンバーが休みの時、APIやSAMLなどの技術的な問い合わせ、会計周りの込み入った問い合わせなど、サポートに入る機会はかなり限定的になりました。
boardのサポートはマニュアル化せず、個々の対応力のレベルを求めていて、それなりにハードルが高いと思っています。
*ちなみに、boardのCSはこんな感じでやっています。
そのため、当初想定よりも時間がかかりましたが、2人が頑張ってくれて、ある程度クオリティを維持しつつ、体制を移行できたのではないかなと思います。
ちなみに、体制を移行した後でも、ほぼ毎日、僕がすべての問い合わせを確認し、必要に応じて、CSメンバーにフィードバックするというのは続けています。
これは、よりレベルアップするためのフィードバックの機会というのに加えて、僕自身が、今後の開発予定などを決めるにあたって、全体的な問い合わせの傾向を肌で感じておきたいというのもあります。
受託の役割の変化
自社サービスの売上の伸びとともに、受託の役割が変化してきています。
boardのような低額のサービスの場合、ある程度の売上になるまでにとても時間がかかるので、これまでは、短期的にまとまった売上を上げられる受託開発は売上面で重要でした。しかし、ストック売上が7割を超えてくると、短期的な売上の必要性は徐々に下がってきます。
boardのようにすでに出来上がっているシステムの場合、今の段階から、コアになる技術要素を変えることは大変ですし、何か大きな変化を加えることはとてもハードルが高いです。とはいえ、技術的に古くなりすぎないようにしていく必要があるので、適宜、少しずつ変更していくような進め方になります。
一方、受託開発では、新規案件はゼロから構築できるので、その時の最適な技術選定ができます。
そのため、今後の受託は、新しいことに取り組んだり、自分たちの技術的・業務的な引き出しを増やす機会として、とても重要になってくると考えています。
データ分析の仕事
実は外の仕事として、開発系以外に、データ分析の支援をやっていたりします。小売のPOSデータ分析とか、大学関係の分析とか。
これまで僕のブログにはあまり出てきていないのですが、僕がまったく関わっていないので、書けないんですよね・・・w
もともと取締役の津久井が1人でやっていた事業で、今年、データ分析の仕事をするメンバーが1人入社し2人体制になり、少し幅が広がったかなという状況です。
ちなみに、boardではデータ分析的なことをまったくやっていないので、どこかのタイミングで2人にお願いしようかなと思っています・・・。
採用
前期は、エンジニア1名、データ分析1名の2名の採用ができ、来年1月から、エンジニア1名、CS1名の入社が決まっているので、これでちょうど10名になります。
会社の規模は10人前後までと思っているので、一旦これで採用は完全にクローズしました。
ここ数年、とても良い採用ができていて、「10人」と考えた時に必要なメンバーが揃ったように感じています。ということで、しばらくは今のメンバーで、ひたすら、自分たちおよびサービスのレベルアップをしていければ良いなと思っています。
余談ですが、ここ数年の採用は、「とある人からの紹介」か「その人のTwitter経由で僕のことを知った」というケースが大半なので、たぶんその人に一生頭が上がらない気がしています。
10人の会社で1万社が使うサービスを目指す
最近、boardに関してこう言っています。
数字は具体的な目標と言うよりはイメージなので厳密ではないですが、要するに「小さな会社」を維持し、人手のかからない事業運営をしていこうと思っています。
board自体、中小規模の会社をターゲットにしたサービスなので、自分たちがドッグフーディングできなくなったら、やっぱりboardの強みが失われてしまうと思うし、人数に関係なく売上を伸ばせるのがSaaSならではだと思っているので、そういうのを目指していきたいなと思っています。
「小さなチーム、大きな仕事」という本、起業前にたまたま読んで、この時に「そうだよね、小さな会社でも別にいんだよね」って思った記憶があります。
ただ、覚えているのはそのくらいで、内容はすっかり忘れていて、でも最近読み返してみたら、だいぶ影響を受けてたのか、とても近いものを感じました。
上場は目指さないし、規模・知名度には興味がないので、僕自身も、ユーザさんと向き合って、じっくりプロダクト開発に専念して、その結果として、1万社が使ってくれるまでになれればいいなと思っています。
ちなみにもうすぐ2500社なので、あと4倍・・・。